「長編」
君が君でなければ

君が君でなければ17(R18)

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  どぎまぎ服を脱ぐ優より先に、和樹は浴室に入った。かかり湯を済ませバスタブに浸かったところで、優も浴室に入ってきた。
 股間を隠すようにかかり湯をする優は、とても恥ずかしそうだ。そんな姿がいじらしくて仕方ない。
「さあ来い」
 なかなかバスタブに入ろうとしない優を促すように、和樹はスペースが許す限り両腕を広げた。
 大人げない和樹の態度をみて緊張が解けたのか、優がやっとバスタブに入った。波を立てないように静かに湯に浸かった優は、和樹の足の間で、和樹に背を向けて三角座りをした。
「ほくろ見っけ」
 まるで子供がてんとう虫を見つけたような口調でそう言いながら、右肩甲骨の上部にあるほくろを人差し指で押すと、優がびっくりして振り向いた。気が緩んだその隙を狙い、和樹は優を抱き寄せた。
「優の肌は本当に綺麗だよな。びっくりするぐらいすべすべだ」
 緊張している肩を解す様に撫でると、優の身体は余計に強張った。勇気を出して一緒に風呂に入ったはいいが、和樹がいつオオカミに変身するのかと思うと、気が気でないのかもしれない。
「何もしないから、そんなにビビんないでよ」
 優がその気になりきらないなら、無理を通すつもりはない。優のことだから、音が外に漏れたらとか、男二人で動くのに風呂場は手狭ではないかとか、色々気にし始めてしまったのかもしれない。優の気持ちもわかるので、安心させたくて何もしないと言うと、優は一瞬だけ和樹を振り向いて、それから前を向いて肩を落とした。
 何もしないと言われて、優は残念がっているように見えた。思い切り緊張していたのは、期待と恥じらいが原因であって、躊躇いではなかったようだ。
 なんだ、けっこうやる気じゃないか。
 きつく膝を寄せる優がその気だったのなら、美味しく頂くほかにない。何もしないと言ったそばから、和樹は背後から優の胸に両手を回した。
「あっ」
 突然両胸の突起を摘ままれて、優が声を上げた。そしてすぐに両手で口を押えた優を見て、和樹の中で火が付いた。
「やっぱり、我慢できない」
 欲情宣言をした途端、和樹の象徴が元気になり始めた。優の尻にそれが当たって、優はびっくりしたように尻を浮かせた。そこを狙って、和樹は片手を滑りこませ、優の後孔を指の腹で撫でた。途端に孔がきゅっと締まって、和樹の欲がこれ以上ない程煽られた。
 和樹が背を預けているのと反対側のバスタブの淵を指さして、和樹は優に言った。
「そっちに両手ついて」
 優はぎこちない動作で膝立になり、言われた通りバスタブの淵に両手を置いた。
「やばいな」
 顔のすぐそばにきた優の尻は、それをおかずに自慰できそうなくらい色っぽかった。
 骨格からして細いのに、優は尻だけ肉付きがいい。触り心地の良い双丘を両手で鷲掴みにして左右に広げると、小さな窄まりが誘うように収縮した。
「顔と性格はめちゃくちゃ可愛いのに、ここはすげえエロいのな」
 直接的な感想を聞いて、優は羞恥に身悶えた。つられて腰が揺れて、後孔がきつく締まった。
「なんか、もう……」
 吸い寄せられるように後孔に唇を寄せると、優は背を反らせて抵抗しようとした。
「だ、だめです。汚い」
「いやいや、充分綺麗だから」
 尻をがっちりと掴んだまま、和樹は舌で後孔を愛撫し始めた。試しに舌で孔をつついてみたが、きつく締まったそこには、指や猛った欲望と違い柔らかい舌は入らない。
 よくこんな狭いところに、己の欲望が埋まるものだ。
 人体の不思議に感心しつつ、和樹は唾液で濡れた孔に人差し指を入れた。舌とは違って指はすんなりと埋まっていくのがまた不思議になったが、内壁が指を愛撫するように収縮したのを感じ、煽られてもう一本指を埋めた。
「あ、あっ」
 二本の指で敏感な箇所を何度も擦ると、優の中心が反応し始めた。とてつもなく煽情的な優の下半身を何かのショーを見ている気持ちで眺めていた和樹は、ふと思い立って指を孔の中で離してみた。すると、指の間にちらりと中が見えた気がした。途端に、和樹の欲望が張り切った。
「半端ねぇな」
 指で愛撫している後孔が本来何のために使われる器官なのかわかっている。なのに、欲情しきった和樹は、そこに入りたくて仕方がない。
 和樹もバスタブの中で膝立になり、優の尻に己の欲望を宛がった。期待に収縮する孔に先端を添えて、ゆっくりと腰を前に進めた。
「すっげ」
 初めて直接挿入したが、これが本能なのかと思うぐらい、粘膜に包まれるのが気持ちよかった。潤滑剤を使っていないから急激に中を責めてはいけないと思うのに、どうしても腰を押し出してしまう。
「んんっ」
 一気に全てを埋めてしまったとき、優がくぐもった声を上げた。音漏れを気にしているのか、いつもの上ずった嬌声ではなく、唇を噛んだような声だった。
 優の頭の中に、冷静な部分が残っているのがわかる。それが和樹の嗜虐心を煽った。
 和樹が住んでいる単身者用アパートには、防音設備は必要最低限しかない。独身男性だけで埋まっているアパートで、派手に性交の音が隣家や外に漏れるのは得策でないことは、和樹もわかっている。けれど、そんなことを考える優の余裕を、無性に奪いたくなった。
 片手で優の腰を掴んだ和樹は、やや乱暴に抽挿を始めた。優はくぐもった嬌声を上げ続けるが、それもだんだん余裕がなくなっていく。
 もう少しで、優の頭の中が自分と快楽だけで埋めつくされる。そう感じて、和樹は優の中心を握った。
「ああっ」
 後ろからの快感だけで極められる優も、男なのだから性器に触られればそれにも感じるだろう。自分のものではないので、勝手に触ってはいけないだろうと今までは遠慮していた。だが、握った中心を律動に合わせて扱いてみると、中の収縮が顕著になって優の嬌声もはっきりとしたものに変わった。
「だめ、あっ」
 後ろと前を同時に責められて、優は背を反らせて快感に耐えていた。欲望を埋めた中は絞り上げるように収縮して、すぐにでも極められそうなくらいの快感を和樹に与える。
「離して、あ、あっ」
 優の中心はぴんと張りつめて、もう絶頂の手前まで来ているようだった。和樹も余裕がなくなって、本能に踊らされるように腰を前後に振りつづける。
「い、いっちゃう」
 上ずった声が聞こえたと思った瞬間、優の身体が痙攣して、和樹の手に白濁が放たれた。欲望を深くまで銜えた中は小刻みな吐精に呼応するように収縮して、和樹の絶頂を引き寄せる。
 吐精しきった優が、喘ぐように吐息をこぼした。
「は、あ……」
 最奥まで欲望を埋めたまま、和樹は搾り取られそうになるのに耐えた。極みの手前でぐっと堪えながら、小さく痙攣し続ける中を再び責め始めた。
「ひ、ああっ」
 限界まで開かれた孔を極める直前の欲望で責めると、とてつもない快感が生じる。いつでも極められる状態のまま抽挿を再開して、眩暈がしそうなぐらい感じてしまう。
 達したばかりの優の中心をまた愛撫すると、優は眼前にある浴室の壁をひっかいて、過ぎる快感に耐えていた。
「もう、イったのに」
「もうちょっとだけ、頑張って」
 優の中が気持ち良すぎて、まだ終わりたくない。極めようと思えば今すぐにできるのに、和樹は猛った己をやや乱暴に抜いては奥まで押し進めた。
「あぁっ、お、おかしくなるっ」
 優の切羽詰まった声が聞こえたのに、和樹は自分自身を止められない。優の中心を夢中で扱きながら、どこまで吐精せずに耐えられるのか挑むように、和樹は破裂音がするほど激しい抽挿を続けた。
「もう、だめっ、あ、ああ」
 一際高い嬌声が響いた。凄まじく色っぽい声が耳に届いた瞬間、最奥まで埋めた欲望が食いちぎられそうになった。全てを吸い上げるように中が収縮して、和樹は遂に達した。
 やはり本能なのか、最奥に精を残すように和樹の腰が勝手に前へと押し出される。全てを注ぎきるまでこれ以上ないほど奥まで欲望を埋めて、堪えたせいか長引く吐精が終わったとき、優の中心を握っていた手の指の間から新たに放たれた優の白濁が零れおちた。
「はぁ」
 劣情を放ち冷静さが戻ってきて、和樹はやっと優の中から退いた。絶頂の余韻に浸りつつ、散々責めた孔を眺めていると、自分の放った白濁が流れ出してきた。生々しい光景はとても煽情的で、今達したばかりだというのに、もう一戦挑めそうな気分になった。
「めちゃくちゃ良かった」
 大した感想を思いつけない自分が恨めしいが、本当のことなのでそう言うと、優はゆっくり振り返って湯船に腰を下ろしてしまった。もう膝立ち状態も保てない様子の優は、数秒放心していたが、和樹が音をたててキスをすると、我に返った。
「二回も、いっちゃった」
 羞恥心を露にそう言った優は、過ぎるほど可愛かった。さっき己の放った劣情が優の孔から流れ出るのを見ただけでもう一戦お願いしたいくらいだったのに、優の可愛さが炸裂していて、落ち着きそうだった下半身が年甲斐もなく再燃してしまいそうだ。
「俺、シャンプーするわ」
 上気した優の肌をできるだけ見ないようにバスタブの外に出て、和樹は忙しなく洗髪を始めた。
「優って、モテるんだな」
 気を紛らわすようにそう言うと、バスタブの淵に両手をのせていた優が思い当たらないという顔をした。
「なんつーか、かなり敏感だから」
 思いつく限り遠回しに優の性的経験について尋ねると、優は和樹の言いたいことを察したのか、困ったように斜め下を見た。
「気持ちいいと思ったのは、和樹さんが初めて」
 最強の殺し文句が、健康的な色をした小ぶりな唇の間から放たれた。和樹を煽るためではなく、本心からそう言ったせいで激しく照れる優を見ていると、本気でもよおしてしまいそうになった。
「寿命を全うしないとしたら、殉職じゃなくてキュン死になる自信が湧いてきた」
 そんな冗談を言って気を紛らわせつつシャンプーを流した和樹は、シャンプー同様、通っている美容室で勧められて購入したコンディショナーを髪につけた。
「正直、キュン死と萌え死の差はわからないんだけどな」
 そう言って笑うと、優もその差はわからないと言って笑った。
 和樹が給湯パネルの時計を見ると、年越しまであと一分だった。家中の時計はできるだけ正確に合わせているので、今年は風呂場にて年を越すことに気付いた。急いでコンディショナーを流した和樹は、バスタブ越しに優の唇を塞いだ。
「今年もよろしく」
 和樹が言うと、優は小さく驚いた。視線でパネルの存在と、その時計機能が十二時ちょうどを表示していることを知らせると、優は納得したように微笑んだ。
「よろしくお願いします」
 幸せそうな笑顔と新年の挨拶が返ってきた。バスタブの淵に両手と顎をのせて和樹を見つめる優が可愛すぎて、そんな優と新しい年を迎えたことに純粋な幸福を感じた。
「今年はいい年になりそうだ」
 優の愛らしい双眸を見つめると、優の可愛い顔がほころんだ。
 もう一度キスをしてから自身の身を清めた和樹は、優の背中を流して、そして全身も洗った。オヤジ臭い冗談を言いながら優を泡だらけにするのが楽しくて、恥ずかしがりながらも和樹のしたいようにさせてくれる、可愛くて色っぽい優が愛しい。これからもこんな日がいくつも訪れるのだと思うと、惰性に任せてきた人生が、意味あるものへと着実に変化していくのを感じた。
 二人でシーツを替えて、ベッドに入ったとき、恋人の体温を感じながら眠りに就く幸せに包まれた。そして和樹は、おやすみのキスの甘さと温かさを噛み締めるのだった。
 翌朝、自然と目が覚めたのは午前九時過ぎだった。優と仲直りできた上に性欲もきっちり満たされてから眠りについたこともあって、元旦の目覚めは心地いいぐらいすっきりしたものだった。
 大きく伸びをしてからベッドを降りると、玄関が開閉される音がした。気になって玄関につながるLDKに出ていくと、水色のダウンジャケットを着てトートバッグを提げた優の姿があった。
「起こしちゃいました?」
 申し訳なさそうな顔で言われ、和樹はタイミング良く起きただけだと言った。すると優はほっとした表情を浮かべて、ジャケットを着たまま食卓に弁当箱や食品保存容器を広げ始めた。
「簡単に作れるものだけですけど、おせち料理に挑戦してみたんです」
 笑顔でそう言った優がお節料理を取り出したトートバッグは、初めて会った日に優が提げていたものと同じだった。
「それって、エコバッグ?」
「前に働いていたブランドのノベルティだったんです。でも、値の張るスーツを買いに来るお客様はエコバッグなんて要らないって言う方が多くて、余ってしまったのでスタッフ全員に配られたんです。エコバッグの割には頑丈だから、重宝してるんですけどね」
 よく見ると、キャンバス地のバッグは、鞄と呼ぶには生地が薄かった。中身が透けて見えそうなバッグは、貴重品を入れて持ち歩くには少々心許ない。優が瀬田殺しの犯人だったかもしれないと疑ったとき、このバッグの中には証拠品が入っていたのではないかとまで考えた。だが、数分自宅を空けるだけでも玄関の施錠を怠らない優が、生地の薄い鞄に証拠品を入れるわけがない。和樹は己の思い違いが酷いものだったと、改めて痛感した。瀬田の件で優を疑ってしまったことは去年に置いてきたのでもう生し返そうと思わないが、優と瀬田の繋がりを知って動揺したからといって、酷い誤解をしてしまった。
 刑事としての反省点に元旦の朝一番から気づいてしまい、やはりどこまでも刑事な自分が嫌になりそうだった。けれど、和樹よりも早く起きて自宅までお節料理を取りに行ってくれた優は、こんな自分を大好きだと言ってくれた。
 寛容な優に出会えてよかった。仕事ばかりでつまらない自分なのに、それでも好きだと言ってくれる優に出会えて、本当に良かった。
「初めて作ったから、美味しくないかもしれないけど」
 謙遜しつつお節料理を披露する優が、堪らなく愛しくなった。何時間もかけて料理を作ったのは、和樹と仲直りできることを期待していたからだと思うと、このアパートに閉じ込めてしまいたいくらい可愛くて、そんな優に一生傍にいてほしいと心の底から思った。
「絶対に美味いだろう。優が作ったんだから、間違いなく美味いに決まってる」
 重箱ではなく、保存容器に詰まっているところが、妙にリアルでいじらしい。海老や鯛は無いけれど、彩り鮮やかなお節料理を眺めていた和樹は、容器の中に好物の栗金団をみつけ、感動しすぎて優に抱きついてしまった。
「ずっと俺の傍に居てくれよな。優がいなくなったら、俺、死んでしまうから」
 優のことを小動物系だと思っていた。それこそ、独りぼっちになってしまうと死んでしまいそうなウサギみたいな、繊細な男だと思っていた。けれど、優は厳しい現実を生きてきたからか、芯が強い。そんな優と離れ離れになってしまったら、優がいなくなってしまった寂しさから死んでしまうのは自分のほうだ。
 水色のダウンジャケットを着たままの優をしばらく抱きしめて、大人げない態度を笑われてしまった和樹は、ずっとそばにいると言ってくれた優の唇を、何度も何度も塞いだ。



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